8年ぶりに、宮崎県日之影町のわら細工たくぼさんを訪ねました。迎えてくださったのは、代表の甲斐陽一郎さん。以前お会いしたときは、移住された山木さんが入られたばかりの頃で、お父様の稔さんとの3人で工房にいらしたのを覚えています。
現在、工房のメンバーは、この3人に小野満さん、佐藤さん、深井さん、栗山さんを加えた7人。さらに地域の方々も参加されていて、庭にはヤギたちまで(!)。手仕事の工房としては、なかなかない大所帯です。棚田での暮らしや、たくぼさんの藁仕事に魅せられた仲間が少しずつ増えて、賑やかなお迎えにうれしくなりました。



たくさんの手で仕上げるわら細工
早速工房を案内していただきました。現在、たくぼさんのわら細工は、基本的に分業で作られています。祝亀など工程の多い作品は、完成までに5人の手が関わることもあるのだそうです。太い縄を綯うのは力の要る仕事ですが、細い縄を綯う作業をはじめ、力の強さを問わない工程もたくさんあります。若いメンバーも、地域の70代・80代の方も、それぞれに合った持ち場がある。生産性を上げるための分業が、様々な人の働ける仕組みになっているのが素敵だなと思いました。地元の方と若手が並んで手を動かす現場は和やかで、取材日も軽やかな宮崎弁の冗談があちこちで。あまりの居心地の良さに、気づけばずいぶん長居してしまいました。




どうしてたくぼさんに人が集まっているのか
最初に「なかなかない大所帯」と書きましたが、素材作りから行う手仕事で生計を立てることは、本当に難しいことです。まして棚田では、平地では機械化できる作業も、人の手に頼る場面が多くなります。そんな中でたくぼさんには若い仲間たちが次々と加わっているのです..! そして、皆さんしっかりと日之影に根をはっているのです。ずっと、どうしてなのだろう?と思っていたのですが、話を伺ううちに、その理由が少しずつ見えてきました。
「自分が主役ではなく、みんなが主役になれる組織を目指しています。」


手仕事の世界では、職人のもとで修行し、いずれ独立して自分の工房を構えるのが一般的な道です。ですが、棚田で稲から育てて藁を作り、それを使って制作するというたくぼさんのやり方は、一人では難しい。そこで陽一郎さんは、独立という形をとらなくても、一人ひとりが個人として輝ける場をつくることで、この地でのわら細工を長く一緒に続けてほしいと考えているそうです。
例えば、日々の工房の切り盛りは山木さん、県外でのワークショップは小野満さん。取引先との窓口は深井さん。責任ある仕事をメンバーそれぞれが担い、取り組まれています。いろいろなきっかけで集まった皆さんが、この地で自分の色を安心して出せていることが、たくぼさんの生き生きとした今に繋がっているのだなと感じました。
挑戦が人を惹きつける
陽一郎さんの個人ブランド「綯吉」、わら細工のワークショップや海外での展示会、観光施設での体験監修や研修など、たくぼさんの工房から生まれるお仕事は多岐にわたります。作れる作品の量には限界があるので、下処理済みの藁を素材として届けたり、体験の場を広げたりと、わら細工に触れられる入口を増やすことにも力を入れているそうです。2027年5月には、工房の敷地の一画にギャラリーがオープン予定なのだとか。これは行かねば..! 次々と挑戦を続けていく皆さんの姿に、私も奮い立つような気持ちになりました。


FAVORでは毎年秋に、たくぼさんのわら細工を分けていただき、ご紹介しています。素材作りから管理まで徹底され、藁の美しさが際立つ作品たちは、飾ると目に入るたびに嬉しくなるものです。今年も作品をご覧いただきながら、その向こうに広がる日之影の棚田や、勢いがありながらも朗らかな工房の空気まで感じていただけたら嬉しいです。
