富士竹類植物園 竹マルシェ

早起きして朝6時に松本を出発。目的地は静岡県長泉町、富士竹類植物園。年に二度開かれる「竹マルシェ」にて、竹の専門家による園内ガイドツアーが組まれると聞き、参加することにしました。

富士竹類植物園は、日本で唯一の竹専門植物園。世界中から集められた竹・笹、約500種が植えられています。背丈も太さも色もまったく違う竹が並ぶ様は壮観で、歩くだけでも十分に気持ちがいいのですが、今回はその道のプロと一緒に回る貴重な機会に恵まれました。

竹マルシェの屋台。焼き筍を購入
珍しい竹に出会える園内

焼き筍を食べるなどしていると、なんとなく人が集まり、ゆるりと竹ツアーがスタート。参加者は10人ほど。案内してくれたのは、国立遺伝学研究所で竹の研究に携わっているという、西山さんです。


東南アジアの竹は、よく咲く

入り口付近に並ぶのは、東南アジア産の竹たち。日本の竹のように地下茎を横へ伸ばさず、株立ちのまますっと上へ育っていくのが特徴なのだそうです。そしてもうひとつ、決定的に違うのが花の周期。日本や温帯の竹が60年、120年、時にそれ以上という気の遠くなるような周期でしか花を咲かせないのに対し、東南アジアの竹は比較的よく花をつけます。実際、園内の東南アジア産の竹は10年前にも、そして昨年にも開花していたそうです。

百二十年に一度の花

その「めったに咲かない」はずの竹が、この日の園内では2種類、同時に花を咲かせていました。ひとつは黒竹・淡竹の系統で、120年に一度と言われる、まさにその周期にあたるもの。もうひとつは布袋竹。こちらは記録そのものが少なく、開花の周期すら詳しくはわかっていないという、輪をかけて珍しい花でした。

開花した竹。枝先に小さな花穂がつく

静かな世代交代

満開の竹のすぐ隣には、少し前に花を終えて枯れてしまった個体がありました。竹は花を咲かせると、地下茎ごと完全に枯れてしまいます。

けれど別のエリアでは、そうして枯れた場所から、種によって新しい筍が芽吹いている様子も見ることができました。ここから新しい地下茎が伸び、何十年もかけて少しずつ太く高い竹へと育っていくのだそうです。

通常の竹林であれば、開花・枯死・芽吹きは一帯でまとめて起きるため、この3つの段階を同時に見ることはできません。何百種もの竹を植え分けているこの植物園だからこそ出会えた光景でした。

小さな筍を発見

雑種の庭で、スズダケに出会う

個人的に一番前のめりになってしまったのが、この話です。矢竹はネザサとスズダケの雑種ではないか、と考えられていて、園内では実際にその交雑種が育てられているとのこと。確証はまだこれからだそうですが、スズダケを素材として扱っている身としては、聞き逃せない一言でした。竹や笹の世界には、思っていた以上に変種や雑種が多いようです。長年かけてこうした交配種を残してこられた村松幹夫博士のサンプルが、今もこの植物園に集められ、貴重な資料になっているという話も、印象に残りました。

交雑種の笹と名札

竹を愛する人が集うマルシェ

この他にも、園内でしか出会えない珍しい竹について詳しく解説してもらったり、台湾真竹で作られたオカリナを取り出し、その場で演奏してくださる場面もありました。西山さんは研究者という堅いイメージとは違い、竹そのものを楽しんでいる様子が伝わってきました。

竹だらけの植物園を、竹に夢中の専門家と一緒に歩く贅沢な時間。一本一本の竹に物語があることを知り、植物園を歩く楽しさを改めて感じた一日でした。

竹マルシェでは、竹細工のワークショップや作品の販売、竹楽器の演奏なども行われており、竹に詳しくなくても十分に楽しめます。春と秋の年に二度開催されているそうなので、興味のある方はぜひ足を運んでみてください。

ワークショップで作った風車